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Keynoteデモ顛末

 私のKeynoteのデモの報告をいたしますが、最初に、機材をお貸しいただいた
鷲見さん、沖田さん、石黒さんにお礼を申し上げます。

 機材は結局、私のiBookをFireWireターゲットモードで起動し、
それを鷲見さんのPowerBookG4の外部ハードディスクにして、そこから
G3用にインストールしたシステム、アプリそのままで起動、デモするという
大技を用いました。そこにいたる詳細は後述します(※)。
 これにロジテックのワイアレス赤外線マウスをつないで、もしG4から
離れても、マウスクリックができるようにしておきました。ワイアレスは
1〜2メートルは飛ぶので、この方法はお勧めしておきます。レーザー
ポインターを兼ねたワイアレスマウスというのも売っていますが、
Keynoteというアプリは上映中はクリックして前に進めるくらいしか、
操作がないので、ボタンさえ押せれば充分です。

 さて、Keynoteというソフトはプレゼンテーションソフトのジャンルに入ります。
例えば、Office付属のPowerPoint、純正のAppleWorks、Adobe Acrobatにも
プレゼンテーション機能がありますし、Macromind Directorもこの目的に使えます。
 文字情報、図形表示、アニメーション、言葉あるいは商品の現物を使って、
聴衆を説得する発表を俗にプレゼンテーションとよびますが、ステージに
上がってするようなものの多くはスライド上映をモデルにして口頭で説明をしながら、
画面を次々に切り替えて発表します。スティーブジョブズの新製品発表講演などが
典型例です。

 このようなプレゼンテーションは意外に難しいもので、スライド形式にとらわれる
あまり、単調な画面の繰り返しになって飽きられたり、一枚のスライドに文字情報を
詰め込みすぎて見にくくなり充分なアピールができなかったり、逆にプレゼンテーション
ソフトならではの、派手な彩色や、アニメーション、エフェクトに凝りすぎる余り、
肝心の内容をおろそかにしてしまう等の問題があります。このジャンルでは、
かの有名なMicrosoft Officeに含まれているPowerPointが広く使われていますが、
市場が寡占状態にあり、Aldus Persuation 3.0が消えた後は、他にユニークなソフトが
出て来ず、そのためPowerPointもMac版は何年も進歩せずにWindows版に比べ
見劣りする事が指摘されていました。
 Keynoteは、Apple社のスティーブジョブズ氏が作成に関わり、既に発表に
使ってきたアプリで、センスの良い効果的なプレゼンテーションを行うためのものです。
簡単な英語のサンプルが付属していて、そこを眺めるとスライドの作り方、仕組みが
わかる仕組みになっていますが、説明不足のきらいがあります。もっと見て面白い
サンプルを添付してもらいたいものです。

 そこで、今回のデモは自作してみました。大体30分くらい、25MB程のプレゼンテーションを
2〜3時間で作りました。慣れるともっと早くなるし、今回はエフェクトに凝りすぎました。
 まず、青を基調にした背景画像をマスタースライドに貼り付けました。マスタースライドは
最初から11枚入っているひな型で、ここに各スライドに共通させたい背景画像を貼り付けたり、
ロゴを入れたりしておくと、全てのスライドにいちいち画像を貼る必要が無くなる便利な
ものです。タイトルやサブジェクト(本文)の配置、フォント、文字の大きさなどをここで
決めておくと、同じマスターを適用したスライドには共通の見た目を持たせることが
できるようになります。統一させたくないときは、スライドの個別の設定で背景を変えたり、
フォントを変えることもできるし、元に戻したくなったら、マスターを最適用することも
できます。11枚のマスターが入ったものをテーマとよび、デフォルトでは12種類のテーマが
内蔵されています。このテーマの種類はPowerPointの方が格段に多いです。Keynoteは
よく言えば厳選されています。テーマには、マスターだけでなく、図形や、ビュレット(見出しに
付くマーク)もセットになっており、 見た目の統一感を大事にしています。

 こうして作ったマスターからスライドを一枚作り、黄色の文字でKeynoteと大きく
タイトルを入れ、白くPresent Differentと別な自体で本文を入れました。
  Keynoteはこれらの文字パーツに個別にエフェクトをかけられます。パーツにかける
エフェクトをBuildとよび、スライドの切替時のエフェクトであるTransitionと区別しています。
パーツは他に図形でも、画像でも、ムービーでも、サウンドでも、Flashアニメーションでもよく、
それぞれに任意のBuildで修飾することができ、これらのパーツの重ね順、影、透明度、
登場順序を変えることで、スライドを演出する事ができます。ここの設定は希望によって
細かく設定が出来、例えば影は黒色に限らず、本体と影の距離も方向も影の幅も変えられます。
パーツはエレメントと呼ばれますが、オブジェクトのほうがわかりやすい気がします。

 タイトル画面ではまず音楽をかけ(オースチンパワーズデラックスのミニ・ミーと首領が
うたい踊るJust a Two of USのメロウなラップを選びました)、つぎに、Keynoteの文字が
回転(BuildはTwirl)して現れ、Present Differentがじわじわと現れ(Dissolve)、さらに、
両者が順に拡大しながら画面全体からはみ出して消える(Scale Up)という流れでした。
Keynoteはマウスをクリックすることで(代わりに右矢印キーでもスペースでも良いのですが)、
このそれぞれのBuildを作動させます。
 この時に、タイマーを効かせて、クリックを自動化できると便利なのですが、
それも良し悪しで、機械的なプレゼンに陥るかもしれません。どうせ演者は
喋るほかにはマウスクリックくらいしかする事がないので、ライブの進行具合に合わせて、
クリックする余裕は充分にあります。
 完全な自動演奏形式で、プレゼンを流しておきたいときは、QuickTimeムービーに
してしまうか、ライバルのPowerPointのファイルにExportして、そちらで自動上映可能な
ファイルを作る方法がありますが、PowerPointに渡すとApple独自のエフェクトは
使えないので、QuickTimeがお勧めです。
 QuickTimeムービーであれば、自動上映もできるし、クリックしないと先に進まない
ような普通のプレゼンも作成でき、Keynoteアプリ無しのスタンドアローンでの
上映も出来ます。実は、Keynoteではフォントの埋込みが出来ず、ランタイム
アプリケーションも無いので、作成環境と違うところにファイルを持ち出すのが
難しいのです。その解決方法がおそらくQuickTimeムービーなのでしょう。

 そこで試しに、ムービーを作ってみました。800x600でつくった13MBの
Keynoteファイルを変換するとSorenson video 3, 800x600, 1670万色以上,
ムービーFPS 11.18, 2分30秒のムービーで、ファイルサイズは50Mになりました。
Keynoteと同じく、スライドやエフェクトを終えるたびにポーズし、再生ボタンを
クリックすると続きが流れるという形式のムービーです。エンコードの時間は実時間の
10倍以上かかりましたが、それはG3-500MHzだからかもしれませんし、
デモの中に1分以上の長いQuickTimeムービーが入っていて、それのデコード&
再エンコードが大変だったのかもしれません。keynoteでは1024x768と800x600の
2通りの画像サイズが選べますが、1024x768で出力すれば、ムービーの解像度も
上がると思われます。

 さて、例会で披露したBuild、Transitionでは3次元のCube(立方体が転がるように
次の面が出てくる)、Flip(パネルを裏返すように切り替わる)が注目され、2次元の
エフェクトではDrop(上から落ちてきて弾んで止まる)、Twirl(中央に向かって
回転しながら小さくなる)等がレを引いたようです。同じTwirlでもTransisionと
Buildでは微妙なところで違いがあり、パーツにかけるときは回転しながら小さくなり
チえる、あるいは現れるという1方向の変化ですが、スライド全体にかけるTransisionでは
前のスライドが回転しながら小さくなると、次のスライドが回転しながら出現します。
Twirlの向きは右回転だけで、本当は左回転させたい場面があったのですが
(時間を逆戻しするイメージをだすために、サンプルにあった時計の絵を左に
回したかった)、それは出来ません。ただし、スピードは5段階で変えられます。
 エフェクトに凝り出すときりがなく、例えば、同じサイズの色違いのパーツを重ねておいて、
奥のパーツを先に表示しておき、手前のパーツをエフェクト付きで出現させると、
色が変わったように見えますし、折れ線グラフの線を後から一本増やして見せることも
出来ます。ムービーの出現、消失にもエフェクトがかけられる(動画を動かしながらでは
ありませんが)のも、四角い画面が出て消えるだけの動画より、興味を引きます。

 エフェクトはこの辺にして、多くのプレゼンで不可欠な文字情報はどうかというと、
Keynoteはタイトルとサブジェクト、それとテキストエレメントという3種類の文字パーツを
持つ事が出来ます。テキストエレメントは図形と同列の扱いですが、タイトルと
サブジェクトは特別な位置にあります。サブジェクトは簡易アウトラインエディターで
エディットでき、テキストに階層を持たせ、それをスライドに反映する事が出来ます。
上述したようにマスターはデフォルトで11種類あるわけですが、それはタイトルと
サブジェクトの置く位置、画像を表示するしない、画像の位置などが異る、
11種類のひな型を用意してあるという事です。テキストエレメントとタイトルは
それぞれ一つの文字列なので、エフェクトのかかり方も単純ですが、
サブジェクトは階層構造を持たせたテキストなので、例えばBuildで出現の方法を
選ぶにしても、1行ずつとか、小見出しごとにまとめてとか、全部いっぺんにという
選択肢があり、全部いっぺんに(All at Once)以外を選ぶと、サブジェクトが
華麗なエフェクトをまとって順序よく出現します。従来のスライドをつかった講演では、
このように各小見出しごと順に表示する事はできないためにレーザーポインターを
持って、観衆を誘導していたわけですが、Keynoteでは例えば行単位で文字が
現れるので、ポインター無しで注目を集めることが出来ます。ただ、テキストの
編集では、PowerPointに一日の長があり、PowerPointのアウトラインプロセッサーは
もう少し使いやすく、日本語の入力もきびきびしています。Keynoteはこの部分が
未完成のように思います。このため、Outline ViewよりNavigator Viewのほうが使いやすく、
テキストはタイトルやサブジェクトの表示エリアを選択してから、入力ないしペーストします。
それ以外の場所に置こうとすると、タイトルやサブジェクトではないテキストエレメントに
なりますが、これはなぜか背景の色や、縁取りなどの属性を持ちません。ちょっと意外です。

 このようにパーツ(エレメント)は、スライド画面にコピーペーストやドラッグドロップで
持ち込んでも良いので、操作は大変直感的です。NavigatorというViewを選んでおいて、
スライド画像を50%に縮小表示し、その周りにColor, Font, Inspectorという3つの
パレットウインドウを開けば、1024x768のiBookの画面でも右にデスクトップが
表示される余地があります。パーツをそこに置いておいて、あるいはファインダーに
表示させておいて、ドラッグドロップで持ち込むというのが、操作しやすく感じました。
 このViewでは、スライド画面の左側に2カ所、マスタースライド群と、それを加工した
実際のスライドが表示されます。スライドには階層構造を持たせることが出来、
一つのスライドを選んでTabを押すと1階層下にスライドが移ります。Shift-Tabで
階層が上がります。上の階層のスライドに表示される三角をクリックすると
その下の階層のスライドが見え隠れするのはFinderと同じ挙動です。PowerPointは
スライド一覧があり、縦横にスライドが並ぶので、そのほうがスライドの並び替えが
しやすいかもしれません。ただ、Keynoteはスライドそのものを選んで、コピーペースト
したりドラッグ出来るのと、Deleteキーひとつで当該スライドを消去する事もでき、
さらには、このようなスライドの消去にすら「複数回のUndoが効く!」のが、大きく使い勝手を
あげています。

 応用編ですが、画像は、様々なファイル形式が使え、フォトショップファイルを
アルファチャンネルを持たせたままドラッグドロップ出来ます。これで枠を作って
後ろに写真を並べ次々と切り替えていくと、スライドの中でスライド上映ができるのですが、
これに何の意味があるかというと、音なんです。
 keynoteで一つ問題があるのは音の扱いで、エフェクト音は他のパーツと
同列に扱われ、音の出現、消失の順序もパーツの出現と同じくorder(順序)に
組み込まれます。したがって、スライド表示すぐに音楽を開始して、
同じ画面が表示されている間BGMを流しっぱなしにする事は出来ても、次の
スライドに移るときにはブツッと切れてしまうのです。Buildは音にはかけられず、
フェードアウトもできません。ループするかと、往復再生(順方向が終わると
逆再生。あまり使えない)だけ選べます。ですから、BGM付きアルバムをつくり
たいときは、スライドを切り替えずに、画面の中に複数の写真を重ねて、
Buildで切り替えていけば良いです。
 サウンドはmp3が持ち込めて、結構長いファイルでも気軽にドロップできるので、
かなり気軽に使えます。画面上にドロップすると、サウンドのマークがスライド上に
現れ、オブジェクトとして扱われます。サウンドマークは上映時には表示されません。
私は写真、ムービーを集めて、スライド1枚ごとにmp3ファイルでBGMを付け、
簡単な子供の成長アルバムを作ってみました。Life with PhotoCinema
with Keynoteと題して作った作品は、そのままムービーにしてCD-ROMに焼けば、
孫の姿をみたい祖父母へのプレゼントになります。以上、応用編でした。


(※注釈)
 私はiBook(dual USB, VRAM8MB)のユーザーですが、ビデオモニターに
ミラーで出力させた時にVRAM不足の警告が出て、プレゼンを上映(play)でき
ない事を経験していました。さらに実験するとVRAM2MBのPowerBookG3
(bronze)ではビデオ出力せず、本体だけでも上映できません。keynoteで
プレゼンを作成する操作はできてもそれをplayさせようとするとVRAM不足の
メッセージがでます。

 それで、鷲見さんのPowerBookG4にkeynoteをインストールして、と
思っていました。しかし、ものは試しと自宅でiBookに液晶XGAモニターを
つないでみたら、問題なく動作するのです。ただし、エフェクト(transition, Build)を
かけたときに黒いちらつきがでます。これは会場で液晶XGAプロジェクタに
つないだときも同じでした。これでは見苦しいだろうと、デモの直前に
iBookでの上映をとりやめ、PowerBookG4で行うことに変えました。しかし、
再インストールしたり、素材を移すのは面倒だし、トラブルのもとです。
 そこでiBookを外部FireWireターゲットモードで起動し、PowerBookG4の
外部ディスクとして動作させました。しかし、それではアプリがフォントの不足を
警告します。アプリで使用するフォントがインストールされていないためです。
 keynoteをG4にもインストールしようと思ったら、ここで鷲見さんがアイディアを
出してくれました。FirewireでつないだiBookを起動ディスクにしてはどうかと。
iBookでG4が動くか、しかも今朝インストールしたばかりのMacOS 10.2.4で?と
心配でしたが、、、動くものですねえ。デモの際中フリーズもせずに、
G4からのミラーリングでプロジェクタに上映することが出来ました。しかも、
エフェクトの際の黒いちらつきは皆無です。ちらつきの原因はCPUパワー不足か、
VRAM不足かは不明です。
 結論は、VRAM2MB (PowerBookG3, 400MHz)ではプレゼン作成中のテスト
上映ができないので、作業が困難。VRAM8MB (iBook, 500MHz)では本体のみで
作成、上映はできるが、ビデオ出力は出来ない。XVGA出力はできるが、
若干のちらつきがある。VRAM16MBのPowerBookG4では上映できて、
ちらつきもないという事でした。G4のVRAM容量が違っていたら、鷲見さん
ご訂正下さい。

うちのG4のVRAM容量は16MBでした。--鷲見

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